深煎り 建築基準法

建築基準法について深煎りします。

住宅とは?~新型コロナウイルスの影響で改めて考えさせられました。~

建築業界でも新型コロナウイルスの影響が出ているようです。

影響のひとつに中国で生産されているユニットバスやシステムキッチンなどの住宅用の建築設備やドアなどの建材が日本に入ってこないということがあるようです。

これに対して国土交通省が通知を出しました。

http://www.njr.or.jp/data/20/mlit_co_200227.pdf

当初の設備のある計画を設備がない計画に変更の手続き等をして、設備かない計画で工事を完了させ完了検査を受けることができるように柔軟に対応するように。

という内容で、検査する側の建築主事・指定確認検査機関向けに出されています。

 

実際は、建築主には当初の計画通りに設備を設置した状態で引き渡すと思われるので、あまり意味がないように思うのですが、年度末ということでハウスメーカーなどにとってはとりあえず完了検査に合格して検査済証を発行してもらうこにより、融資を実行させ建築主から建築費を回収したいと考えてるのではないでしょうか。

一部の資金繰りが厳しいハウスメーカーなどが国に要望しているのではないかと思われます。

国のこの対応には賛否あると思いますが、この問題で改めて思うことがあります。

「住宅とは?」です。

建築基準法では定義されていません。

辞書によると


住宅(じゅうたく)の意味 - goo国語辞書

と定義されています。

建築基準法の一般的な取り扱いとしては、台所・風呂・便所の3つの設備が揃っていることが住宅であること必須条件としていることが多いと思います。

人が住まうのに必要な設備が備わった建築物を住宅とするという考えをから、具体的に人が住まうとは寝食や入浴・排泄などを行うことで、それらを行うためのための設備は台所・風呂・便所であるという発想です。

 

さらに、「住宅とは?」でよく問題になるのは令1条1号のいわゆる「一敷地一建物の原則」です。

一敷地には2棟の住宅は建築できませんが、住宅(母屋)と離れは用途上不可分であるため一敷地に建築できます。

例えば、

親の実家の隣に息子家族の家を建てたいと考えたとき、「一敷地に住宅2棟は建築できないけど、住宅に附属する「離れ」なら建築できる」という悪い発想が生まれ、息子家族の家を最終的には上述の3つ設備を備える計画だけど、役所(指定機関)への申請では1つの設備を設置しないことで「住宅ではない⇒離れ」として手続きを行い、完了検査後に改修工事で3つの設備を揃えて「離れ」を「住宅」にしてしまう。

これは、明らかに違法行為なのですが、一昔前は、「役所の手続きさえ通れば」という発想で設計者が建築主を主導して(または建築主には言わずに)行うことが多々あったのではないでしょうか。


今では、コンプライアンスの問題もありこのようなことを計画する設計者は少ないとは思いますが、「3つ設備が揃っているかどうか」だけがひとり歩きし、そもそも、住宅とは「人が住まうための建築物」であるというや「離れ」とは何かといったことから考えれば、規模や間取りからも「離れ」ではないのは明らかなのではないでしょうか。

 

もう1つ改めて考えされることがあります。 「工事の完了とは?」です。建築基準法の規定を満足していることが検査できれば工事完了なのかといえば違うような気がします。

少し長くなってしまったため、詳しくはまたの機会に書ければと思います。

 

新型コロナから発生した問題で改めて考えさせられました。

ビューローベリタスの行政処分について思うこと

令和2年2月14日に9社の指定確認検査機関が確認検査業務で不適切行為があったとして国土交通省の処分を受けました。


http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000823.html

http://www.mlit.go.jp/report/press/content/001328791.pdf


この9社の中でも、ビューローベリタスジャパン㈱が約40日間の新規の申請受付の停止処分を受けたということは個人的にかなりの衝撃でしたし、建築業界としても衝撃的だったのではないでしょうか。ビューローベリタスジャパン㈱が行ったのは建築基準法に適合しない計画に対して確認済証を交付したという不適切行為とのことです。


衝撃を受けた一方で、いつかはこのようなことが起こるのではということは予見されていたのではないでしょうか。


平成12年まではいち公務員である建築主事だけが行っていた建築確認・検査業務を、法改正により平成12年以降は国等から指定を受けた民間の確認検査機関(以下「指定機関」)でも行うことができるようになりました。今では、東京都内でいえば業務を行える指定機関は36機関にものぼり、建築主事に申請することはほとんどなく90%以上の建築確認・検査申請が指定機関にされている現状です。


http://www.jcba-net.jp/map.html


そうなると、それぞれの指定機関が客である設計者(建築主)を取り合うという構図になります。

そのため、いち指定機関(民間企業)として、他の指定機関よりいいサービスをして差別化を図らなければなりません。

このいいサービスというのがいい方向での差別化であればいいですが、現実はそうではなく、「審査期間の短縮のため、審査がおろそかになる」とか「厳しく審査すると、次回以降、他の指定機関に申請されてしまうのを恐れて審査自体が緩くなる」といった望ましくない方向での差別化になっているように思います。また、ただ単純に審査者や指定機関自体の審査能力にも問題があるのかもしれません。


さらに言うと、本来、建築確認・検査については設計者が資格ある立場として建築基準法の適合する計画であるとして申請されるのが大前提ですが、この大前提が崩れてしまっているのではとも感じます。


指定確認検査機関制度の問題、指定機関・設計者の能力不足や法令遵守の意識の低さが今回の行政処分の背景にあるのではないでしょうか。

法6条区分(法第6条第1項)

今回は、法6条区分について解説します。
建築基準法に関わっているとよく法6条区分という言葉を耳にするかもしれません。法6条区分建築基準法を勉強するうえでとても重要です。

法6条自体は建築物を建築する前の手続きについて規定されている条文で、この法6条区分によって建築する際の手続きが変わってきます。

さらに、法6条以外の規定でも、たとえば法20条の構造耐力に関する規定では、どんな技術的基準どんな構造計算が適用されるかは建築物が法6条区分のどの区分に該当するのかによって変わってきます。

 

 
それでは、どのように区分されるのかみていきます。
法6条1項中の一~四号の4つに区分されます。
 
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第6条 …
 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの
 木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500㎡、高さが13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの
 木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超えるもの
 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法(平成16年法律第110号)第74条第1項の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
 
表にまとめると以下のようになります。

f:id:f-kenkihou:20200301003502p:plain

 
どんな要件(要素)によって区分されているのかが重要です。
一号は用途床面積によって分けられます。
 二号と三号は構造種別規模によって分けられます。
四号は特定の区域内一~三号に該当しない建築物です。
 
ここで押さえておくべき深煎りポイントが3つあります。
深煎りポイント①
一号と二号に該当する建築物一号と三号に該当する建築物が存在するということ。
例えば以下のような建築物です。
①木造3階建てで延べ面積300㎡の共同住宅 ⇒ 一号と二号に該当する建築物
②鉄骨造2階建てで延べ面積200㎡の飲食店 ⇒ 一号と三号に該当する建築物
 
深煎りポイント②
すべての建築物が一~四号のどれかに該当するわけではないということ。
例えば以下のような建築物です。
・上の表の四号の要件中の①~④のいずれの区域外で、木造2階建てで延べ面積150㎡の戸建て住宅
 
蛇足ですが、
深煎りポイント③
よく法文を読むと、一号では「床面積の合計が200㎡を超える」と規定されていて二号(三号)では「延べ面積が500㎡(200㎡)」と規定されています。床面積延べ面積で明確に用語を使い分けしています。それぞれの用語は令2条で規定されていますので覚えておきましょう。簡単に解説すると床面積は建築物の壁等で囲まれた部分の水平投影面積で、延べ面積は建築物全体の床面積の合計です。
 
今回はとりあえず、法6条区分がどのように区分されるかを解説しました。
この区分によって法6条の手続きがどのように変わるのかや構造耐力に関する規定の適用されるのかは、別にそれぞれ解説したいと思います。

建築主事と特定行政庁は何が違う?

建築主事を置く市町村(の長)を建築基準法では特定行政庁といいます。

また、都道府県はもれなく建築主事がおかれており、都道府県(知事)も特定行政庁です。

✳特定行政庁と建築主事の解説

 

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特に意識しなければ、「建築主事が行う事務特定行政庁が行う事務がそれぞれあるんだ。」で終わってしまいますが、よく考えるとちょっと違和感がありませんか?

 

・建築主事って置く必要があるの?

・建築主事を置くなら建築主事が建築基準法に関わる行政の事務を全部すればいいのでは?

 

まだまだ、私も勉強不足でこの建築主事と特定行政庁の関係性をすべて解説できる訳ではありませんが、

特定行政庁と建築主事では行う事務の性質が根本的に違う。

ということが大きく関わっています。

 そこで今回は、それぞれが行う事務の性質について、解説をしていきます。

 

まず、建築主事はどんな事務を行うかというと、建築基準法上、建築確認・中間検査・完了検査・仮使用認定(法7条の6第1項第二号)です。

これらに共通しているのは、羈束行為(キソクコウイ)と言われる行政行為だということです。

羈束行為とは、

行政庁の行為のうち、自由裁量の余地のない行為。法の規定が一義的であって、行政庁はそれをそのまま執行しなければならない行為。 ⇔ 裁量行為
です。(コトバンクより)
よって、白は白、黒は黒と判断することであり、本来は、誰が何度判断しても同じ判断でなければなりません。(そうはなっていないのが現実だと思いますが…)
 
一方、特定行政庁が行う事務は、原則、許可・認可・認定(一般的には許認可(キョニンカ))と言われる事務で、裁量行為と言われる行政行為です。(許可・認可・認定は行政手続き的に使い分けされています。)
例えば、法43条2項一号をみると
その敷地が幅員四メートル以上の道(…)に二メートル以上接する建築物のうち、…国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
とあります。
一部省略しましたが、最後の条文をみると特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものとあり、この部分が各特定行政庁がそれぞれの裁量で支障がないことを判断し、認めることになります。
どのようなことで交通上(安全上・防火上・衛生上)支障がないと判断するのかについてはは、建築基準法に基準が規定されていません。そのかわりに各特定行政庁で許可基準を設けていることがほとんどです。
ちなみに、横浜市では、横浜市公式HP中の下記のサイトで許可基準を公表しています。

建築基準法第43条第2項の規定による許可・認定 横浜市

 

例にあげた法43条2項一号の許可に関わらず、許認可に関する基準は、各特定行政庁が裁量の範囲で設けているものなので、ある特定行政庁の区域では許可された内容でも別の特定行政庁の区域では許可されないということがあるので、注意が必要です。(各特定行政庁の許可基準自体は同じような許可基準が設けられていることが多いのですが…)

 

今回は、建築主事と特定行政庁の事務の性質の違いについての解説でした。

【用語の定義】特定行政庁(法2条)

特定行政庁は語句の通り、特定の行政庁(都道府県・市・町・村)です。

どのような行政庁が建築基準法のなかで特定行政庁に該当するのかということが、法2条三十五号で定義づけされています。

そして、特定行政庁はどのようなことをするのかというと、

建築物の違反指導(法12条)、接道許可(法43条2項)、用途許可(法48条)などがあり、その他ここではあげきれないくらい多岐に渡ります。一方、建築主事の行う事務は建築確認・中間検査・完了検査・仮使用認定に限られています。

建築主事と特定行政庁の行う事務の違いについては、また解説します。ここでは、特定行政庁の定義について解説を進めていきます。

 さっそく、条文を見ていきます。

 

法第2条第三十五号

三十五 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。

 

①:建築主事を置く市町村その市町村の区域

  →その市町村の長のことを特定行政庁という

②:①以外の区域

  →都道府県知事のことを特定行政庁という

 

例えば、

神奈川県の横浜市は(法4条1項に基づく)建築主事を置く市です。よって、横浜市の特定行政庁は横浜市です。

一方、同じ神奈川県の海老名市は、建築主事を置いていない市です。よって、海老名市の特定行政庁は海老名市長ではなく、神奈川県知事です。

 

✳建築主事についての解説

 

次に、本文の後段にただし書きの除外規定が設けられています。

原則、市町村の建築主事は法4条に基づいて置くこととされています。

法97条の2第1項では、規模などにより限定した建築物・工作物の建築確認の審査を行う建築主事を市町村に置くことができる特例(建築主事の特例)が設けられています。

また、法97条の3では、法97条の2と同じような建築主事を特別区(いわゆる東京23区)に置くことができる特例(特別区の特例)が設けられています。

 

✳建築主事の特例・特別区の特例についての解説

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法97条の2・法97条の3に基づいて建築主事を置いた区域では、 

①:建築主事の特例と特別区の特例によって市町村(特別区)の建築主事が建築確認の審査を行う建築物に関すること →市町村の長のことを特定行政庁という

②:①以外の建築物に関すること →都道府県知事のことを特定行政庁という

 

建築主事の場合と同様、建築物の規模などによって、同じ区域で特定行政庁が市町村長になるのか都道府県知事になのるか変わります。

たとえば、

 千葉県野田市は法97条の2に基づいて建築主事を置いているので、法4条のただし書きが適用されることから、

①木造2階建て延べ面積100㎡の住宅の違反指導(法12条)→野田市野田市長)が行う。

②鉄骨造2階建て延べ面積400㎡の飲食店の違反指導→千葉県(知事)が行う。

となります。

もう少し解説すると、

①の建築物は法6条1項四号に該当する建築物で、法97条の2第1項の政令(令148条1項一号)で定める建築物に該当しますが、②の建築物は法6条1項一号と三号に該当(四号に該当しない)し、法97条の2第1項の政令で定める建築物に該当しません。

 

以上が、特定行政庁の定義についての解説でした。

特定行政庁と建築主事についてなんとなくイメージできるようになってくると、次に、

・建築主事と特定行政庁は何が違うの?

・そもそも、分ける必要があるの?

という疑問がでてきます。その辺りについては、冒頭にも書きましたが、改めて解説します。

 

 

【用語の定義】延焼のおそれのある部分(法第2条)

とりあえず法文を見てみましょう。

 

第二条
六 延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。
イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分
 
本文で具体的に延焼のおそれのある部分が規定されていて、イとロに除外できる部分が規定されています。
 
延焼のおそれのある部分は、
隣地境界線等から、
1階は3m以下の範囲、2階以上は5m以下の範囲
です。
隣地境界線等というのは、3つあります。
隣地境界線
道路中心線
同一敷地内の建築物相互の外壁間の中心線
です。
③については、カッコ書きがあり同一敷地のいくつかの建築物をまとめて延べ面積が500㎡以内の建築物の集まりを1棟の建築物と見なすといっています。
要するに、500㎡以内の固まりの中の建築物相互の外壁中心線については延焼のおそれのある部分がない
となります。
(法文の定義を厳密に説明すると、1棟の建築物とみなすことにより建築物相互の外壁中心線がそもそもない(建築物相互でない)ということになります。)
 
そして、
本文のあとの除外される部分について、
まずはについて
(でここは、接続詞の読み方もかねて解説します。大きい括りから小さい括りへと読み進めていくのがポイントです。法律の読み方などについては別で解説したいと思います。)
 
いちばん大きな接続詞の括りは、
A又はBに面する部分
(A:防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面)
(B:耐火構造の壁その他これらに類するもの)
です。
よって、
(本文も含めて)隣地境界線等から1階で3m、2階で5mの範囲でもAに面して部分またはBに面している部分は延焼のおそれある部分にはならない。
となります。
 
これを意識しつつ、A・Bを見ていきます。
Aについては
防火上有効なC又はD
C:公園、広場、川その他の空地
D:水面
となります。
Cは少しややこしいですが、
公園広場公園・広場・川以外の空地
の4つの空地(規定の仕方上、公園・広場・川も空地の1種)に分けられます。
 
よって、防火上有効なCとDだけにかかります。よってB(耐火構造の壁その他これに類するもの)は防火上有効かどうかは関係ありません。
 
そしてBは
その他これら(耐火構造の壁)に類するもの
の2つに分けられます。
 
イのなかに、その他その他のがてできています(その他の後にがあるかないかの違い)が、比べてじっくり読めばわかるかもしれませんが、法律上、この2つは使い分けされています。(どのように使い分けられているかはまた改めて解説します。)
 
 次にについて
外壁面と隣地境界線等との角度などにより国交大臣が告示で定めた部分
においては、延焼のおそれのある部分から除外されます。
ということになります。 
✳法2条六号はR1.6に法改正され、法文の構成が代わり、除外規定がイとロで定められました。ロの除外規定が追加されたことにより規制が緩和されました。ただ、R1.12時点ではまだ告示が定められておらず、実態として、法改正前と変わっていません。
 
ここまでが、延焼のおそれのある部分の定義についての解説でしたが、 
 
具体的な建築計画においては、
建築物の一部または全部が延焼のおそれのある部分に入ってくると、建築物の外壁・開口部・屋根などに一定の防火措置が求めらる。
とったことが他の条文で規定されてきますので、各条文ごとに解説していたいと思います。

構造耐力② (法第20条) ✳建築物の区分

以前の記事で法20条(1項)の構成について解説しました。

簡単にいうと…

建築物の規模・構造等による建築物の区分

→その建築物の区分に応じて仕様規定構造計算基準を適用させる。

という構成になっているということでした。

 

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今回は、その建築物の区分についてそれぞれ解説していきたいと思います。

まず、区分は4の区分に別れます。

それぞれ法20条1項一号・二号・三号・四号の4区分です。

 

一号は単純です。

高さが60m超の建築物です。

 

次に四号です。これも単純です。

一号・二号・三号に該当しない建築物です。

 

次に二号です。

最初に言っておきますが、複雑です。個人的に複雑になっている理由は建築物の区分を分けるのに構造計算によって判断するケースがでてくることだと思っています。

(前段に解説した法20条の構成を意識して法文を読んでいけばちょっとは理解しやすいと思います。)

まずは、法20条1項二号の建築物の区分が規定されている部分を見てみましょう。

 

二 高さが六十メートル以下の建築物のうち、第六条第一項第二号に掲げる建築物(高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるものに限る。)又は同項第三号に掲げる建築物(地階を除く階数が四以上である鉄骨造の建築物、高さが二十メートルを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。)

 

まずは前提条件が高さ60m以下です。

その次は「AまたはB」という大きな構成です。

Aが、

第六条第一項第二号に掲げる建築物(高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるものに限る。)

Bが、

同項第三号に掲げる建築物(地階を除く階数が四以上である鉄骨造の建築物、高さが二十メートルを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。)

よって

高さ60m以下でAに該当する建築物

高さ60m以下でBに該当する建築物

のどちらかで法20条1項二号に該当する建築物になるということです。

 

次にAとBに何が規定されているか見ていきましょう。

Aは比較的簡単です。

法6条1項二号建築物(木造で階数3以上または延べ面積500㎡超)で高さ13m超または軒高9m超

です。

例えば、

①木造3階建て延べ面積100㎡高さ14m、軒高8.5mの戸建て住宅

→Aに該当(前提条件の60m以下も満たしています。)

②木造平屋延べ面積150㎡の高さ4m、軒高3.5mの飲食店

→Aに非該当(前提条件の60m以下は満たしていますが…)

 

次にBの部分です。

Aの部分と構成は同じなんですがカッコ内が「a、bまたはc」という構成になっていて、さらにcは別の条文(36条の2)に飛びます。

法6条1項三号建築物(木造以外で階数2以上または延べ面積500㎡超)で

a:地階を除く階数3以上の鉄骨造

b:高さ20m超のRC造(またはSRC造

c:令36条の2に該当する建築物

令36条の2を見ると

 
第二十条第一項第二号政令で定める建築物は、次に掲げる建築物とする。
一 地階を除く階数が四以上である組積造又は補強コンクリートブロック造の建築物
二 地階を除く階数が三以下である鉄骨造の建築物であつて、高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるもの
三 鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造とを併用する建築物であつて、高さが二十メートルを超えるもの
四 木造、組積造、補強コンクリートブロック造若しくは鉄骨造のうち二以上の構造を併用する建築物又はこれらの構造のうち一以上の構造と鉄筋コンクリート造若しくは鉄骨鉄筋コンクリート造とを併用する建築物であつて、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
イ 地階を除く階数が四以上である建築物
ロ 高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超える建築物
五 前各号に掲げるもののほか、その安全性を確かめるために地震力によつて地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することが必要であるものとして、構造又は規模を限つて国土交通大臣が指定する建築物

 

一号から五号のうちどれかに該当するとcに該当します。

一号:地階を除く階数4以上の 組積造 か 補強CB造 の建築物

二号:地階を除く階数3以下鉄骨造高さ13m超軒高9m超 の建築物

三号:RC造とSRC造の併用構造高さ20m超 の建築物

四号:木造・組積造・補強CB造・鉄骨造の2以上の併用構造 木造・組積造・補強CB造・鉄骨造のいずれか1以上 と RC造かSRC造の併用構造

でさらに

地階を除く階数が4以上(イ)高さ13m超か軒高9m超(ロ) の建築物

少し複雑です…。)

五号:H19国交告示593号で指定する建築物(告示がとても複雑です…。)

となります。

 

✳告示593号についてはまた解説のことしたいと思います。(この中に構造計算の結果により法20条1項二号に該当するかどうかの判定をすることになり法20条の建築物の区分を理解するうえで肝になる部分だと思います。)

 

あとは三号ですが、

建築物の区分が規定されている部分を見てみましょう。

 

高さが六十メートル以下の建築物のうち、第六条第一項第二号又は第三号に掲げる建築物その他その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)を石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造その他これらに類する構造とした建築物で高さが十三メートル又は軒の高さが九メートルを超えるもの(前号に掲げる建築物を除く。) 
 


冒頭の部分(①)と最後のカッコ内(②)を見ると

①高さ60m以下の建築物⇒一号の建築物にならない

②前号(法20条1項二号)の建築物以外の建築物


と規定されていて、この①、②はこの区分の前提条件です。


それを前提に、さらに次のa~cのどれかに該当する建築物が三号の区分に該当する建築物ということになります。

a:法6条1項二号の建築物

b:法6条1項三号の建築物

c:石造・れんが造・CB造・無筋CB造・その他これらに類する構造のいずれか で 高さ13超か軒高さ9m超 の建築物


まとめると三号に区分に該当する建築物は、①と②を満たし、a~cのどれかに該当する ということになります。

ここで重要なところは、法20条1項一・二号以外の法6条1項二・三号に該当する建築物は法20条1項三号に該当するということになり、建築物の安全性を確認するための構造計算が必須ということになります。


これで、一~四号のすべての建築物がもれなく振り分けられたことになります。

(※告示593号はまた改めて解説します。)