深煎り 建築基準法

建築基準法について深煎りします。

【用語の定義】特定行政庁(法2条)

特定行政庁は語句の通り、特定の行政庁(都道府県・市・町・村)です。

どのような行政庁が建築基準法のなかで特定行政庁に該当するのかということが、法2条三十五号で定義づけされています。

そして、特定行政庁はどのようなことをするのかというと、

建築物の違反指導(法12条)、接道許可(法43条2項)、用途許可(法48条)などがあり、その他ここではあげきれないくらい多岐に渡ります。一方、建築主事の行う事務は建築確認・中間検査・完了検査・仮使用認定に限られています。

建築主事と特定行政庁の行う事務の違いについては、また解説します。ここでは、特定行政庁の定義について解説を進めていきます。

 さっそく、条文を見ていきます。

 

法第2条第三十五号

三十五 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項又は第九十七条の三第一項の規定により建築主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。

 

①:建築主事を置く市町村その市町村の区域

  →その市町村の長のことを特定行政庁という

②:①以外の区域

  →都道府県知事のことを特定行政庁という

 

例えば、

神奈川県の横浜市は(法4条1項に基づく)建築主事を置く市です。よって、横浜市の特定行政庁は横浜市です。

一方、同じ神奈川県の海老名市は、建築主事を置いていない市です。よって、海老名市の特定行政庁は海老名市長ではなく、神奈川県知事です。

 

✳建築主事についての解説

 

次に、本文の後段にただし書きの除外規定が設けられています。

原則、市町村の建築主事は法4条に基づいて置くこととされています。

法97条の2第1項では、規模などにより限定した建築物・工作物の建築確認の審査を行う建築主事を市町村に置くことができる特例(建築主事の特例)が設けられています。

また、法97条の3では、法97条の2と同じような建築主事を特別区(いわゆる東京23区)に置くことができる特例(特別区の特例)が設けられています。

 

✳建築主事の特例・特別区の特例についての解説

f-kenkihou.hatenablog.com

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法97条の2・法97条の3に基づいて建築主事を置いた区域では、 

①:建築主事の特例と特別区の特例によって市町村(特別区)の建築主事が建築確認の審査を行う建築物に関すること →市町村の長のことを特定行政庁という

②:①以外の建築物に関すること →都道府県知事のことを特定行政庁という

 

建築主事の場合と同様、建築物の規模などによって、同じ区域で特定行政庁が市町村長になるのか都道府県知事になのるか変わります。

たとえば、

 千葉県野田市は法97条の2に基づいて建築主事を置いているので、法4条のただし書きが適用されることから、

①木造2階建て延べ面積100㎡の住宅の違反指導(法12条)→野田市野田市長)が行う。

②鉄骨造2階建て延べ面積400㎡の飲食店の違反指導→千葉県(知事)が行う。

となります。

もう少し解説すると、

①の建築物は法6条1項四号に該当する建築物で、法97条の2第1項の政令(令148条1項一号)で定める建築物に該当しますが、②の建築物は法6条1項一号と三号に該当(四号に該当しない)し、法97条の2第1項の政令で定める建築物に該当しません。

 

以上が、特定行政庁の定義についての解説でした。

特定行政庁と建築主事についてなんとなくイメージできるようになってくると、次に、

・建築主事と特定行政庁は何が違うの?

・そもそも、分ける必要があるの?

という疑問がでてきます。その辺りについては、冒頭にも書きましたが、改めて解説します。