深煎り 建築基準法

建築基準法について深煎りします。

特別区の特例 (法97条の3)

法97条の3(法97条の2の次の条)には特別区の特例が規定されています。

まず、特別区というのは、

いわゆる東京にある23の区のことで詳しくは地方自治法に規定されています。(地方自治法においても政令市に置かれる区(行政区)とは異なり特別な権限が与えられていたりします。)

 

以前に解説した法97条の2の「建築主事の特例」に似ています。

最初に簡単にまとめると 

特別区にも建築主事が置けること、そして、建築主事を置いたとき、建築基準法の中で建築主事が行うことになっている事務のうち特別区に置いた建築主事が行う事務が規定されています

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今回は、1・2項の建築主事に関する内容について解説したいと思います。

3・4項については、別途解説します。(1項により特別区に建築主事を置いたときの、特定行政庁の事務について規定されています。)

最初に1・2項を簡単にまとめると 

特別区にも建築主事が置けること、そして、建築主事を置いたとき、建築基準法の中で建築主事が行うことになっている事務のうち特別区に置いた建築主事が行う事務が規定されています。

 

さっそく、第1項を見てみると

 

特別区においては、第四条第二項の規定によるほか、特別区の長の指揮監督の下に、この法律中建築主事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものをつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。この場合においては、この法律中建築主事に関する規定は、特別区が置く建築主事に適用があるものとする。

 

と規定されていて、法97条の2に似ていますが、出だしに「法4条2項の規定によるほか」とあります。ここの部分は、「特別区にも法4条2項によって建築主事を置くことができる。」という規定ですが、東京23区のすべての特別区は現在この法97条の3に基づき建築主事を置いています。

また、特別区に置いた建築主事が行う事務については令149条で具体的に規定されています。

令149条1項をみると 

 

 第九十七条の三第一項政令で定める事務は、の規定により建築主事の権限に属するものとされている事務のうち、次に掲げる建築物、工作物又は建築設備(第二号に掲げる建築物又は工作物にあつては、地方自治法第二百五十二条の十七の二第一項の規定により同号に規定する処分に関する事務を特別区が処理することとされた場合における当該建築物又は工作物を除く。)に係る事務以外の事務とする。
一 延べ面積が一万平方メートルを超える建築物
二 その新築、改築、増築、移転、築造又は用途の変更に関して、第五十一条第八十七条第二項及び第三項並びに法第八十八条第二項において準用する場合を含む。以下この条において同じ。)(市町村都市計画審議会が置かれている特別区の建築主事にあつては、卸売市場、と畜場及び産業廃棄物処理施設に係る部分に限る。)並びに以外の法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定により都知事の許可を必要とする建築物又は工作物
三 第百三十八条第一項に規定する工作物で前二号に掲げる建築物に附置するもの及び同条第三項に規定する工作物のうち同項第二号ハからチまでに掲げる工作物で前二号に掲げる建築物に附属するもの

 

と規定されていて、特別区に置いた建築主事が行う事務は、

一~三号(次の①~④)に該当する建築物・工作物・建築設備以外の建築物・工作物・建築設備に関する事務

と規定されています。(本文が否定形で規定されているので注意が必要です。)

逆から読むと一~三号に該当する建築物・工作物・建築設備に関する建築主事が行うこととされている事務は都に置く建築主事が行うこと読めます。

 

具体的に①~④を見ていくと、

延べ面積が10,000㎡超建築物
新築・改築・増築・移転・築造・用途変更で、法51条の卸売市場などの都市計画決定が必要な建築物・工作物(法87条2・3項、法88条2項の法51条の準用規定含む)

建築基準法以外の法令で都知事の許可が必要な建築物・工作物
令138条1項の準用工作物(建築基準法が準用される工作物)で①・②の建築物に附置する工作物
エレベーター・エスカレーターで①・②の建築物に設置するもの

に該当するもの以外の建築物・工作物・建築設備の事務を行う。

法97条の2第1項・令148条1項で規定されている市町村の建築主事等の特例と似た規定ですが、規模などが異なっています。特別区に置く建築主事の方が対象とする規模など範囲が広範囲に渡っています。


最後に、法97条の3に戻ると
第2項では、
1項の規定は1項に基づき建築主事をおいた特別区内の令149条1項各号以外の事務を行う建築主事を都に置くことを妨げるものではない。

と規定されています。

以上、今回は特別区の特例のなかでも建築主事に係る部分(法97条の2第1・2項)に関する解説でした。

冒頭でも書きましたが、3・4項については、別途解説させていただきます。